新石垣空港カラ岳東案・カラ岳陸上案に対する声明

 沖縄県はさる8月19日、地元の行政、公民館、各種団体などの代表および学識経験者からなる新石垣空港建設設位置選定委員会を発足させ、カラ岳東案、カラ岳陸上案、宮良牧中案、そして冨崎野案の4案の中から適切な建設地を選定するよう諮問した。
 しかしこれらの4案はこれまで検討されてきた他の案と同様に何らかの理由により空港建設は困難、あるいは不適切として撤回された案である。それにもかかわらず県がこの4案のみに絞って選定委員会に検討を求めたことは、この20年来の経緯を無視し、選択の幅を意図的に狭めるものであると考える。
 さて、私たちは郡外の者ではあるが、この15年以上にわたって白保のサンゴ礁保全と新石垣空港問題を自らの問題としてかかわってきた。その立場から今回検討対象として再び浮上したカラ岳陸上案については、あらためて強い反対の意思を表明する。
 カラ岳東海域は、世界的に貴重なアオサンゴなどが群生する白保サンゴ礁生態系の中で、ミドリイシ類が優先する海域(ミドリイシ優先帯)と位置付けられ(1985年沖縄100人委員会学術調査)、天然記念物級のユビエダサンゴやエダミドリイシの大群落が生息している。それゆえ1989年4月に白保海上案の代替案として提案されたカラ岳東案に対 しても、国内外から大きな反対の声がわき上がった。国際自然保護連合(IUCN)は1990年12月オーストラリアのパースで開かれた第18回総会で「新予定地(カラ岳東海域)は白保サンゴ礁の不可欠な一部であり、空港ができれば陸海の総合的な生態系が破壊され、生物学的多様性に回復不能な損失が生じる」として同案の見直しを求める勧告決議を 採択した。
 同海域は本年1月の私たちの調査でもユビエダハマサンゴの県内有数の大群落が10年前と同様に健全に生息していた。赤土の流入もないため海水の透明度は非常に高く、昨夏琉球列島全域で発生したサンゴの白化も他海域に比較して少なく、良好な環境が保たれていた。
 一方、カラ岳陸上案についても、陸海一体となった白保サンゴ礁生態系を破壊する以外の何物でもない。海を直接埋め立てないということから海域に影響はないとする考えは誤りである。沖縄には古から「山(陸地)の草木を伐採して禿げ坊主にすると海の生き物たちも死滅する」という言い伝えがあるように陸域と海域は密接につながっており陸とりわけ海の直近の大土木工事から流出する大量の赤土は沈澱池や凝集装置を使っても完全に止めることは不可能であり、白保サンゴ礁生態系に多大な影響を及ぼすことは必至である。
 また、海岸直前まで迫る高さ25メートル、長さ2000メートル以上もの巨大なコンクリート構造物は自然景観の広がる白保一帯の景観を致命的に破壊するものである。 さらに、カラ岳周辺の土地には西銘県政時代に業者との癒着が指摘され、国土法違反の土地転がしによって地価が暴騰した、利権の噂の絶えない場所も含まれており、多額の税金を投入する公共事業にふさわしい場所とは言えない。
 世界に誇る白保サンゴ礁生態系の破壊(カラ岳東案、カラ岳陸上案)は、豊かな自然に心の安らぎを求めて訪れる内外の多くの観光客に大きな失望を与えるに違いない。そしてそれは白保だけにとどまらず石垣島全体に対するイメージダウンになり、地元の観光産業は多大な痛手を被ることになろう。

 私たちは、石垣島の皆さんが白保サンゴ礁生態系を「世界遺産」に登録するなどして将来にわたって保護し、かつ賢明に利用することによって島の発展を期されることを心から願うものである。
1999年11月26日

沖縄−八重山−白保の海とくらしを守る会(那覇)
沖縄環境ネットワーク(那覇)
「白保の海を守る地球市民」山口・宇部の会
白保の海を守る神戸の会
石垣島・白保に空港をつくらせない大阪の会
白保を考える大阪弁護士の会
あだんの会(京都)
新石垣空港問題を考える会(長野)
八重山・白保の海を守る会(東京)


戻る