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問1.県の報告書によれば「轟川地先海域では、北方向に流れる潮流の影響により、サンゴが良好に生息している白保地先海域方向への(赤土の)拡散はなく(中略)海域の水質及び海生生物の生息環境に影響を及ぼすことはない」と記載されている。しかし当会の調査では明らかに赤土が白保海域にまで流入している。また沖縄県環境保健部主催の第23回沖縄県衛生監視員研究発表会(1992年)での報告でも白保北部で59.2g/lの赤土濃度が報告されている。さらに沖縄県環境保健部自然保護課が(財)沖縄県環境科学センターに委託した「珊瑚礁生態系保全調査報告書」(1994年〜1996年)にも「強い北風の時に(轟川河口から)南側礁池への大量拡散も観察されている」と記載されている。これらの報告と今回の県の説明は大いに食い違うが、どういうわけか。
- 回答1. 県がこれまで実施した潮流調査では、通常の気象条件の下では轟川河口域の潮流は概ね北流し、宮良川河口域の潮流は南流していることが確認されています。
しかしながら、台風等の異常な気象条件下においては、轟川や宮良川等から流出した赤土等が乱流により白保海域に流出した場合、同地域に堆積することが考えられます。
平成9年度実施しました環境影響予測評価は、新石垣空港建設工事を実施するにあたり、濁水を25ppm以下まで処理し、放流する工法を採用するため、平常時の河川水のSS濃度とほとんど同様な水質の処理水となります。
このため、新石垣空港建設工事からの処理水について、環境影響予測評価を実施した結果、その濃度は0.05〜0.5mg/lの低濃度であり、「人為的に加えられた懸濁物質が2ppm以下」とした水産用水基準に基づく環境保全目標は達成でき、海域の水質及び海生生物の生息環境に影響を及ぼすことは無い、という結果がでています。
資料1:「平成9年度新石垣空港(宮良地区)環境影響予測評価委託業務概要版参照」
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問2.県は計画地からの処理水のSS濃度を、雨水調整池で自然沈降させた後、凝集沈澱装置により25mg/l以下にするとしている。しかしそれを実現するための凝集剤の種類や量
については事前に(今後)試験を行い確認するとしているだけである。これはあまりにも無責任ではないか。SS濃度は、土壌の種類(縣濁物質の組成)やpH、初期濁度、そして無機凝集剤や有機高分子凝集剤の種類、添加量及びその割合などで変化し、条件によってはこの数値を達成できない場合もありうるからである。県はどういう根拠でもって(どういう条件のもとで)処理水のSS濃度25mg/l
以下を可能としたのか。これまでに現場の濁水試料でジャーテストやシリンダテストは行っていないのか。テストデータがあるなら提供してほしい。
- 回答2.濁水を25ppm以下まで処理できる根拠としては、
- 県で実施した「久米島空港」の土取場工事における濁水処理においては、処理濃度25ppm以下を目標に実施した濁水処理が「3〜7ppm」で処理した実績があること。
- 濁水処理関連業者に問い合わせたところ、「凝集剤の種類や量・沈降時間等でほとんどの土質において目標とする処理濃度にすることが可能である。」という回答を得ていること。
等により濁水を25ppm以下まで処理できると判断しておりますが、報告書にも記述している通り、工事に先だって凝集剤の種類や使用量については、試験を行い最終決定する計画です。
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問3. たとえ実験室で25mg/l以下を達成できたとしても様々な条件が逐―変化する実際の工事現場でこの数値を安定的に達成することは難しいと考える。しかし県は名蔵ダム(15〜22mg/l以下)や久米島空港の建設(3〜7mg/l以下)で実績があり問題ないといっている。どのようにしてこのようなSS濃度が実現できたのか。これらの建設工事の概要と濁水の処理方法及びその具体的なデータ(土壊の種類〈組成〉、pH、初期濁度、無機凝集剤や有機高分子凝集剤の種類、添加量等々)を示してほしい。
- 回答3. 名蔵ダムは国が実施した事業であり詳細な資料が無いため、県が実施した「久米島空港」について現在、ある資料の範囲内で回答いたします。
- 建設工事の概要
久米島空港は、昭和40年1月に民間航空により運航開始され、その後大幅な改修工事を施工し、昭和52年4月に滑走路延長1,200mで供用開始されましたが、その後増加する航空需要に対応するため、滑走路延長L=2,000mの中型ジェット対応空港として第5次空整の中で事業採択され平成9年に事業完了し、7月から供用開始しています。
建設場所については、土地利用条件や米軍訓練空域等様々の理由により現空港を延長する方式を採用する案を採択しました。
このため―部、海域を埋め立てる必要性が生じ、その埋め立て材料を得るために「土取り場」を決め開削工事を実施しました。この開削工事に伴い近隣の河川や海域の環境保全が必要となり、機械処理による濁水処理工法を採用しております。
- 土壌の種類
・判別分類試験―覧表参照(資料2参照)
- 使用凝集剤等
1)水酸化ナトリウム(苛性ソーダ):pHを7以下にする。
2)ポリ塩化アルミ二ウム(PAC):無機系凝集剤でフロックを形成する。
マグナイト :無機系凝集剤で大雨警報の場合使用。
3)アニオン系 A−101 :高分子凝集剤(無機系凝集剤と併用する。)
ノニオン系 N−110
- 凝集剤使用量(基本決定値を示す。)
・SS濃度4,000〜5,000ppmで検討。
・PAC :60g/m3
・A−101:2.5g/m3
・N−110:2.5g/m3
- 初期濁度等
・降雨時の実績及び状況データ(資料3参照)
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問4. 赤土等流出防止対策の対象流域(193ha)に降った雨水はすべて調整池に集め、すべて凝集装置を通して排水するのか。凝集装置はどこに何カ所設置し、その処理能力はどれくらいなのか。
- 回答4. 調整池は流末雨水調整池と場内雨水調整池に分けられ、凝集装置(機械処理)は空港建設地の東西に設置する流末雨水調整池に設置します。(資料4参照)
凝集装置の処理能力は500m3/hr(0.15m3/s)で故障があっても対応できるように2台使用します。したがって、東西の流末雨水調整池における凝集装置の処理能力は1,000m3/hr(0.30m3/s)となります。
また、基本的に濁水は場内雨水調整池において自然沈降、ろ過沈降を実施し、25ppm以下に処理できれば、凝集装置を使用せずに放流する計画です。
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問5. 宮良牧中地区は高台にあり起伏にも富んだ場所である。対象流域内の低い箇所から流域外に濁水が流出し、既存農地からの流出とされるようなことはないのか。
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回答5. 工事の施工にあたっては、工事区域の外周に水路を設置するとともに、必要に応じて小堤工等を設置し、流域外への流出を防止します。(資料5参照)
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問6. 県は、雨水調整池を10年確率降雨で設計しているから日降雨量の99.9%がカバーできるとし、オーバーフロ―することはないと言っている。しかし何日も降雨が続いた場合や、土砂の堆積で調整池の容量が減じている場合にはどのように対処するのか。雨水調整池の総容量と湛水可能な連続降雨量も明らかにしてほしい。
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回答6. 現計画の雨水調整池の総容量は、宮良川流域で221,000m3、轟川流域で182,000m3となっています。これらの容量は、凝集装置の処理能力と降雨強度の関係から、2日雨量の場合に必要容量が最大になるという結果から決定されたものです。(資料6参照)
すなわち、2日雨量に対応できる容量を確保しておけば、3日以上の累計雨量に対しては、凝集装置の処理能力が降雨強度を上回り、オーパーフロ―しないということになります。
調整池内に堆積する土砂は、定期的に排出するほか、堆積土砂の排出が必要となるような降雨が予想される場合においては、随時排出する計画です。
大洪水の生起が予想される場合、雨水調整池を空の状態にする必要があるため、雨水調整池に湛水できる許容量(許容湛水容量)を設定しています。許容湛水容量は、凝集沈澱装置によって2日間で排水可能な容量としています。これは、年に1回生起するような大洪水は、台風や梅雨期の非常に特殊な気象条件下で発生し、降雨の予測は2、3日前に十分可能と判断されるからです。
既往の降雨記録をもとに運転計画の検討を行ったところ、5年確率程度までの降雨に対しては、許容湛水容量が迎降雨時に前処理できていない場合においても、降雨開始時より濁水処理機械の運転を開始すればオーパーフロ―しない、という結果を得ています。連続雨量については、許容湛水容量の前処理を前提としますが、2年確率降雨は、濁水処理機械の運転なしで約7日間連続ため込むことが出来ます。同様に5年確率降雨は、2日間連続までとなります。
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問7. 「これまでと比較にならないほどの容量の雨水調整池を設けるのでだいたいは凝集剤を使わずに処理できる」という発言(沖縄タイムス98年5月14日付、伊波弥三治新石垣空港建設対策室長)があるが、県衛生環境研究所の室内での沈降試験でさえ24時間後に25mg/l以下になった試料土は少なかった。ましてや屋外の調整池では降雨終了後も表流水の流入等の乱流要因もあり、自然沈降だけで25mg/l以下にするには、たとえ可能としてもかなりの時間を要することになる。これでは次の降雨に対応できず現実的ではない。伊波発言はどういうことを根拠にしたものなのか、説明してほしい。また宮良牧中地区の土壌の(自然)沈降試験などのデータがあれば示してほしい。
- 回答7. 赤土等流出防止対策としては、土壌団粒化剤散布、転圧締固め、マルチング等の発生源対策、また、小堤工、切り回し水路、土砂溜桝、浸透桝等の設置による流出抑制対策を徹底します。濁水の処理については、前述のとおり、2年確率降雨で約7日間連続、5年確率降雨で2日間連続湛水可能であるので、可能な限り自然沈降、濾過沈降によって処理する計画です。
雨水調整池の残容量を超えるような降雨が予想され、かつ、調整池内の濁水が基準の濃度以下になっていない場合においては、迎降雨時までに機械処理によって排水し、調整池の容量を確保する計画です。
土壌の沈降試験結果については、別添(資料7)のとおりです。
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問8. 「基本的には凝集剤は無機系のものとする」(同伊波発言)としているが、無機系のものだけでは使用量が多くなり凝集効果が十分ではない。―般的には有機高分子凝集剤と併用されることが多いが、あえて無機系の単独使用にこだわるのは何故か。
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回答8. 発言の趣旨は、害の少ない無機系の凝集剤のみで処理可能な場合は、無機系を単独使用する、ということです。凝集剤の種類、量については、事前に試験を行い確認することにしていますが、必要があれば、有機高分子凝集剤も併用していく考えです。
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問9. 高い凝集効果を期待しSS濃度25mg/l以下を実現するのならば、先にも述べたように無機凝集剤と有機高分子凝集剤との併用が―般的である。しかし現在濁水処理に用いられている有機高分子凝集剤はほとんどがアニオン性のアクリルアミド系のもので、その主原料であるアクリルアミドモノマーの毒性は非常に強い。有機高分子凝集剤を使用する場合、モノマーの残留とその安全性についてどのように考えているのか。
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回答9. 凝集剤の種類、量については、事前に試験を行い決定することとしています。決定された工法については、監視体制をつくり、常に監視する計画ですが、特に、凝集剤の添加量等については、徹底した管理を行います。なお、ご指摘の問題点に関しては、工法決定時に検討し、適切に対処する考えです。
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問10. 凝集装置で発生した汚泥の処理・処分はどのようにするのか。
- 回答10. 凝集装置で発生した汚泥については、空港敷地内で再利用する計画です。
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問11. 濁水処理の監視は、「雨水調整池、処理水槽、河川において、そのSS濃度を常時計測し記録する」としているが、同時に公開はしないのか。
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回答11. 赤土等流出防止対策を実施するにあたり、環境への影響を最小限に食い止めることを目的として、地域の人や専門家を交えて監視体制をつくり、環境保全に万全を期す考えです。SS濃度の計測記録にっいては、請求があれば、公開するのはもちろんですが、積極的に公表することも検討したいと考えています。
(資料8参照)
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問12. 25mg/l以下にして排水するとしても赤土が流出していることに変わりはない。県はこの建設エ事において総量としてどれくらいの赤土が流出することになると推定しているのか。
- 回答12. 流出する赤土の総量は、日雨量15mm以上の降雨を対象とし、放流時のSS濃度をすべて25mg/lと仮定して、轟川流域で約100t、宮良川流域で約116tと推定しています。
現地調査結果の平均SS濃度から算出した現況流出量は、轟川流域で約5,564t、宮良川流域で約9,964tと推定しており、空港建設工事によって、赤土の流出は大幅に減少するものと考えています。
[参考:流出負荷量の算定]
(1) 15.0mm/日以上の年間降水量:1,585mm/年
(石垣地方気象台1973.1〜1997.9までの平均値)
(2) 現地調査結果の平均SS濃度
轟 川 (3,300+392+1,230+893+1,140+1,180+1,850+1,150)÷8=1,392mg/l
宮良川 (845+1,550+1,990+3,390+1,180+366+970+3,760+2,310
+2,680+3,510+9,310+2,980+867+1,160+90+84)÷17=2,179mg/l
現況と建設中の計画地からの流出負荷量
|
流域
|
計画地流域面積
(ha)
A
|
流出係数
B
|
15mm/日以上
降雨日の総流出量
(千m3)
C=(1)*A*B
|
SS濃度
(mg/l)
(2)
|
流出負荷量
(t)
D=C*(2)
|
4年間累計
(t)
E=D*4
|
現況
|
轟川
|
90
|
0.7
|
999
|
1,392
|
1,391
|
5,564
|
宮良川
|
103
|
0.7
|
1,143
|
2,179
|
2,491
|
9,964
|
建設
|
轟川
|
90
|
0.7
|
999
|
25
|
25
|
100
|
宮良川
|
103
|
0.7
|
1,143
|
25
|
29
|
116
|
-
問13. 空港建設でいくら赤土を防いだとしても既存農地からの流出が続けば赤土を防いだことにはならない。県は、昨年8月の当会の質問に対してワーキングチームにおいて赤土流出防止に努めると回答したが、その後もほとんど改善されていない。既存農地からの赤土流出を防ぐには、まず、農地を赤土の流出しない構造(圃場勾配の緩和、畦の設置等々)に改めることが先決である。農林水産省も昨年9月の当会の要請行動の際に、沖縄の気候や自然環境に配慮しない方法で施エし赤土流出を引き起こした過去の土地改良事業に対して、補助金を出した国の責任を認めている。県としても既存農地を赤土の流出しない構造に国の予算で改めるよう積極的に働きかけるぺきではないか。
- 回答13. 赤土等の流出対策が十分でないほ場については、平成5年度に創設した「水質保全対策事業(耕土流出防止型)」により、ほ場勾配の修正、承・排水路の整備、植生、のり面保護等を積極的に実施して赤土等の流出防止に努めているところであります。
しかし、ほ場内の畦の設置については、営農上支障があるとのことで、農家と十分な調整が図られていない状況であります。
なお、轟川流域内において過去に実施した土地改良事業地区のうち、赤土等の流出防止対策の十分でない地区についても、同事業による平成11年度からの整備をめざして準備中であります。