沖縄県知事 大田昌秀殿
海の熱帯林といわれるサンゴ礁は、沖縄を含め、今、世界中で急速に消滅しつつあり、 その保全は国際的に重要な課題になっています。アオサンゴの大群落で世界的に貴重な 石垣島・白保の海も降雨のたびに赤土が流入し憂慮される状態になっています。
さて、同封の写真(上記)は昨年9月5日午後5時30分ごろ那覇から石垣に向かう機上から 石垣島・轟川河口周辺部を撮影したものです。これを見ると轟川河口周辺部の海域が赤 土の流入で広範囲に汚染されているのがはっきり分かります。この日の石垣島の降雨量 は30.5ミリ、午前10時から11時までの1時間降雨量は24.5ミリでした。沖 縄県の調査報告書によれば連続して13ミリ以上の降雨があれば赤土の流出が始まると されています。石垣島では1日の降雨量が30ミリを越える日は年間平均18日ほどあ り、10ミリ以上の日は50数日あるといわれています。すなわち、この写真のような 状況は、少なくとも年間20日以上起こっていることが推測できます。今後、このよう な赤土の流出が続けば白保の海もほかの大部分の沖縄の海と同じようなサンゴの死滅し た海になるのは時間の問題です。白保の海を健全な状態で後世に残していくためには轟 川からの赤土の流出を直ちにストップしなければなりません。そこで私たちは貴殿に対 し下記の質問をしますので8月31日までにご回答くださいますようお願いいたします。
記
- 赤土防止条例が一昨年10月から施行されたにもかかわらず、同封写真のように今 も強い降雨があれば轟川から白保海域に赤土が流出し、世界的に貴重で生物多様性に富 む白保の海に大きなストレスを与えています。貴殿はこの事実を把握されていますか。
- 私たちは白保の海の保全を図る第一歩として、轟川からの赤土流出を年間を通して モニタリングする必要があると考えますが、貴殿はどのように考えられますか。
- 私たちはモニタリングと同時に轟川を通して赤土が白保の海へ流出するその発生原 因を突き止める調査も必要と思っていますが、貴殿はどう考えますか。
- 貴殿は平成6年度から3年間にわたり赤土が造礁サンゴに及ぼす影響等を調べる目 的で「サンゴ礁生態系保全調査」を実施しました。これらの調査結果を踏まえ貴殿は轟 川からの赤土流出を防ぐため、何らかの対策を講じていますか。具体的にお答えくださ い。
- 特に轟川からの赤土の流出を防ぐには流域の農家、工事関係者などの協力も不可欠 です。貴殿はこれらの関係者に対して赤土流出防止のための教育や啓蒙活動を行ってい ますか。
- 白保海域の西表国立公園編入(線引)に関する質問です。貴殿は昨年の八重山・白 保の海を守る会の 公開質問状の回答(環自931号、平成8年4月12日)で「県とし てはカラ岳東から白保前面の海域(白保海域)について、広い意味で一つの生態系とし て捉え、一体として適正な保全を図り、かつ適正な利用がなされるべき海域であると考 えています」と述べています。私たちも貴殿とほぼ同様に概ね宮良川河口以北、通路川 河口以南の海域を同一生態系の海として一体として海中公園地区に指定して特別に保護 すべきと考えています。昨年9月、環境庁、沖縄県、石垣市の間で白保海域の西表国立 公園への編入が確認されましたが、貴殿の上記回答のエリアはそのまま海中公園地区と して保全していくものと考えてよろしいでしょうか。また貴殿などは「白保〜平久保半 島海域の国立公園化を図る」(「八重山地域島おこし計画」)としていますが、これは 白保から平久保半島までの東海岸・海域をひと連なりの公園地域(普通地域及び海中公 園地区)にしていこうとするものですか。それとも白保から平久保半島までの間の白保 周辺海域と平久保周辺海域などをそのエリアごとに公園地域にしていこうとするもので すか(つまり白保から平久保半島の東海岸地域でも公園地域にならないところもあると いうことです)。
1997年8月6日
八重山・白保の海を守る会(東京)
石垣島白保に空港をつくらせない大阪の会(大阪)
白保の海を守る神戸の会(神戸)
沖縄-八重山-白保の海とくらしを守る会(那覇)
《回答先》 〒166 東京都世田谷区上野毛2-23-30-102
八重山・白保の海を守る会
環境第825号
八重山・白保の海を守る会
平成9年9月2日
事務局長 生島 融 殿
沖縄県知事 大田昌秀
轟川赤土流出に係わる公開質問状について(回答) 平成9年8月12日付けで提出されましたみだしのことについては、別添のとお り回答します。
- (問1)赤土防止条例が一昨年10月から施行されたにもかかわらず、同封写真のように今も強い降雨があれば轟川から白保海域に赤土が流出し、世界的に貴重で生物多様性に富む白保の海に大きなストレスを与えています。貴殿はこの事実を把握されていますか。
(回答)1985〜1990年の赤土堆積量調査、平成5年度の「轟川流域赤土流出実態調査」、平成5〜7年度の「サンゴ礁生態系保全調査」、平成8年度の「新石垣空港環境現況調査」、及ぴ降雨時の監視パトロール等から把握しております。
- (間2)私たちは白保の海の保全を図る第一歩として、轟川からの赤土流出を年間を通してモニタリングする必要があると考えますが、貴殿はどのように考えられますか。
(回答)年間を通してのモニタリングは財政的に厳しい状況にあるため、現在、降雨時のパトロールをできる限り実施し、流出状況の把握に努めております。
- (問3)私たちはモニタリングと同時に轟川を通して赤士が白保の海へ流出す るその発生原因を突き止める調査も必要と思っていますが、貴殿はどう考えますか。
(回答)降雨時のパトロール、調査等により、当該流域における赤土等の主な流出源は、既存農地であると考えております。
- (問4)貴殿は平成6年度から3年間にわたり赤土が造礁サンゴに及ぽす影響 等を調べる目的で「サンゴ礁生態系保全調査」を実施しました。これらの調査 結果を踏まえ貴殿は轟川からの赤土流出を防ぐため、何らかの対策を講じてい ますか。具体的にお答え下さい。
(回答)「サンゴ礁生態系保全調査」によると、健全なサンゴ礁の保全のため には、陸域からの赤土流出に対しての総合的な対策が重要であることが提言さ れております。轟川流域においては、赤土流出源が条例の直接的な規制対象外 となっている既存農地であることから、県は、農業関係者・工事施工者等への 講習会の開催やパンフレットの配布等の普及啓発活動及ぴ巡回指導等を実施す るとともに、農業試験場において営農時対策の試験・研究を行っております。 (問5への回答参照)
今後も、県庁内関係部局で構成する赤土等流出防止対策協議会のワーキン グチームにおいて既存農地対策について検討し、ハード面においては水質 保全対策事業(耕土流出防止型)の導入推進、ソフト的対策(営農時対策)と してはマルチング等の普及指導の強化を図り、既存農地からの赤士流出防止に 努めていきます。
- (問5)特に轟川からの赤土の流出を防ぐためには流域の農家、工事関係者など の協力も不可欠です。
貴殿はこれらの関係者に対して赤土流出防止のための教育や啓蒙活動を行って いますか。(回答)県は、農家に対しては、農家用のパンフレットを作成・配布するとと もに、各地域(北部、中部、南部、富古、八重山)に「地域農業推進会議」を 設置して農地からの赤土等流出防止対策を推進しております。また、「農地保 全巡回指導チーム」を設置して、巡回及ぴ農家等への指導?強化を図っており ます。さらに、「土壌保全の日」に土壊流出防止対策の一斉共同活動を地域全 体で取り組み、土壌保全管理の普及啓発を行っております。
工事発注者、施工業者の工事関係者に対しては、「赤土等流出防止対策技 術指針(案)」、「土地改良事業における赤土等流出防止対策設計指針」、 「農業農村整備事業等赤士等流出防止の手引き」、「沖縄県赤土等流出防止条 例届出・通知の手引き」を作成し、工程管理の徹底等、流出坊止対策につ いての講習会を各地域で開催するとともに、年1回赤土等流出防止技術交流集 会を開催して流出防止技術の開発・向上を図っております。
- (問6)白保海域の西表国立公園編入(線引き)に関する質問です。
貴殿は昨年の八重山・白保の海を守る会の 公開質問状の回答(環自931 号、平成8年4月12目)で「県としてはカラ岳東から白保全面の海域(白保 海域)について、広い意味で一つの生態系として捉え、一体として適正な保全 を図り、かつ適正な利用がなされるべき海域であると考えています」と述べて います。私たちも貴殿とほぽ同様に概ね富良川河口以北、通路川河口以南の海 域を同一生態系の海として一体として海中公園地区に指定して特月に保護すべ きと考えています。咋年9月、環境庁、沖縄県、石垣市の間で白保海域の西表 国立公園編入が確認されましたが、貴殿の上記回答のエリアはそのまま海中公 園地区として保全していくものと考えてよろしいでしょうか。また貴殿などは 「白保〜平久保半島海域の国立公園かを図る」(「八重山地域島おこし計 面」)としていますが、これは白保から平久保半島までの東海岸・海域をひと 連なりの公園地域(普通地域及ぴ海中公園地区)にしていこうとするものです か。それとも白保から平久保半島までの間の白保周辺海域と平久保周辺海域な どをそのエリア毎に公園地域にしていこうとするものですか(つまり白保から 平久保半島の東海岸地域でも公園地域にならないところもあるということで す)。(回答)国立公園化については、環境庁を主体に、県も協力しつつ作業を進め ているところですが、公園区域及ぴ海中公園地区の指定については、調査検討 中であります。
海の熱帯林といわれるサンゴ礁は、沖縄を含め、今、世界中で急速に消滅しつつあり、 その保全は国際的に重要な課題になっています。アオサンゴの大群落で世界的に貴重な 石垣島・白保の海も降雨のたびに赤土が流入し憂慮される状態になっています。
さて、同封の写真は昨年9月5日午後5時30分ごろ那覇から石垣に向かう機上から 石垣島・轟川河口周辺部を撮影したものです。これを見ると轟川河口周辺部の海域が赤 土の流入で広範囲に汚染されているのがはっきり分かります。この日の石垣島の降雨量 は30.5ミリ、午前10時から11時までの1時間降雨量は24.5ミリでした。沖 縄県の調査報告書によれば連続して13ミリ以上の降雨があれば赤土の流出が始まると されています。石垣島では1日の降雨量が30ミリを越える日は年間平均18日ほどあ り、10ミリ以上の日は50数日あるといわれています。すなわち、この写真のような 状況は、少なくとも年間20日以上起こっていることが推測できます。今後、このよう な赤土の流出が続けば白保の海もほかの大部分の沖縄の海と同じようなサンゴの死滅し た海になるのは時間の問題です。白保の海を健全な状態で後世に残していくためには轟 川からの赤土の流出を直ちにストップしなければなりません。そこで私たちは貴殿に対 し下記の質問をしますので8月31日までにご回答くださいますようお願いいたします。
記
- 同封写真のように、今も強い降雨があれば轟川から白保海域に赤土が流出し、貴殿 も海中公園地区に指定し世界遺産条約に登録することにより保護を進めようとしている (八重山・白保の海を守る会の公開質問状への回答、石総企36号、平成8年4月15 日)世界的に貴重で生物多様性に富む白保の海に大きなストレスを与えています。貴殿 はこの事実を把握されていますか。
- 私たちは白保の海の保全を図る第一歩として、轟川からの赤土流出を年間を通して モニタリングする必要があると考えますが、貴殿はどのように考えますか。
- 私たちはモニタリングと同時に轟川を通して赤土が白保の海へ流出するその発生原 因を突き止める調査も必要と思っていますが、貴殿はどう考えますか。
- 轟川からの赤土流出を防ぐため、貴殿は何らかの対策を講じていますか。具体的に お答えください。
- 特に轟川からの赤土の流出を防ぐには流域の農家、工事関係者などの協力も不可欠 です。貴殿はこれらの関係者に対して赤土流出防止のための教育や啓蒙活動を行ってい ますか。
- 白保海域の西表国立公園編入(線引)に関する質問です。貴殿などは「白保〜平久 保半島海域の国立公園化を図る」(「八重山地域島おこし計画」)としていますが、こ れは白保から平久保半島までの東海岸・海域をひと連なりの公園地域にしていこうとす るものですか。それとも白保から平久保半島までの間の白保周辺海域と平久保周辺海域 などをそのエリアごとに公園地域にしていこうとするものですか(つまり白保から平久 保半島の東海岸地域でも公園地域にならないところもあるということです)。また特別 に保護をしなければならない海中公園地区に、私たちは概ね宮良川河口以北通路川河口 以南の海域をひと連なりの生態系として指定すべきと考えますが、貴殿はどのようにお 考えですか。
1997年8月6日
八重山・白保の海を守る会(東京)
石垣島白保に空港をつくらせない大阪の会(大阪)
白保の海を守る神戸の会(神戸)
沖縄-八重山-白保の海とくらしを守る会(那覇)
《回答先》 〒166 東京都世田谷区上野毛2-23-30-102
八重山・白保の海を守る会
石 民 環 第249号
八重山・白保の海を守る会
平 成9年9月30日
事務局長 生島 融 様石垣市長 大 濱 長 照
轟川赤土流出に係わる公開質問状について(回答) 平成9年8月8日付けで貴会から提出されましたみだしのことについては、下記のとお り回答します。
記 (問1)同封写真のように、今も強い降雨があれば轟川から白保海域に赤土が流出し、貴 殿も海中公園地区に指定し世界遺産条約に登録することにより保護を進めようとしてい る(八重山・白保の海を守る会の公開質問状への回答、石総企36号、平成8年4月15 日)世界的に貴重で生物多様性に富む白保の海に大きなストレスを与えています。貴殿 はこの事実を把握されていますか。
(回答)轟川流域の赤土等の流出については、沖縄県が平成5年度に実施した「轟川流域 赤土流出実態調査」報告書及び降雨時の監視パトロール等により、把握しております。
(問2)私たちは白保の海の保全を図る第一歩として、轟川からの赤土流出を年間を通し てモニタリングする必要があると考えますが、貴殿はどのように考えますか。
(回答)年間を通してのモニタリングにつきましては同感ですが、財政的に厳しい状況に ありますので、現在、行っている降雨時のパトロールを一層強化するなどして、当該流域 の流出状況の把握に努めてまいりたいと考えております。
(問3)私たちはモニタリングと同時に轟川を通して赤土が白保の海へ流出するその発生 原因を突き止める調査も必要と思っていますが、貴殿はどう考えますか。
(回答)轟川流域における赤土等の流出源は、降雨時の監視パトロール等により、おお むねが既存農地からの流出であると考えています。
(問4)轟川からの赤土流出を防ぐため、貴殿は何らかの対策を講じていますか。具体的 にお答えください。
(回答)轟川流域からの赤土等の流出は、広範囲にわたる河川流域の既存農地からの流 入であることから、農地からの流出を防止する事が、重要であること考えております。
石垣市では「土砂等流出防止管理事業」を導入しており、本年度は上流の中田地区において ほ場整備事業で造成した沈砂池等に堆積している土砂等を浚渫し、赤土流出防止に努めており ます。(問5)特に轟川からの赤土の流出を防ぐには流域の農家、工事関係者などの協力も不可欠で す。貴殿はこれらの関係者に対して赤土流出防止のための教育や啓蒙活動を行っていますか。
(回答)農家に対しては、巡回パトロール等を通じて耕起・耕作時には側溝及び道路等に土砂 を流出させないようにし、側溝に面した部分は耕起しないようにして農地から赤土等の流出防 止に努めるよう指導を行っております。さらに今後は、ポスター、パンフレット等を作成、配 布するなどの広報活動を通じて赤土等の流出防止の啓発・啓蒙を図って行きます。
工事関係者に対しては、「沖縄県赤土等流出防止条例」を尊守し、工事発注者、施工業者へ の出防止対策のための講習会の開催や、「沖縄県赤土等流出防止条例届出・通知の手引き」等 を関係者へ配布し、流出防止を図っています。(問6)白保海域の西表国立公園編入(線引)に関する質問です。貴殿などは「白保〜平久保 半島海域の国立公園化を図る」(「八重山地域島おこし計画」)としていますが、これは白保 から平久保半島までの東海岸・海域をひと連なりの公園地域にしていこうとするものですか。 それとも白保から平久保半島までの間の白保周辺海域と平久保周辺海域などをそのエリアご とに公園地域にしていこうとするものですか(つまり白保から平久保半島の東海岸地域でも公 園地域にならないところもあるということです)。また特別に保護をしなければならない海中 公園地区に、私たちは概ね宮良川河口以北通路川河口以南の海域をひと連なりの生態系として 指定すべきと考えますが、貴殿はどのようにお考えですか。
(回答)国立公園編入につきましては、環境庁の編入作業に合わせながら、市も協カし作業 を進めているところですが、公園地域及ぴ海中公園地区等のエリア指定区分については、調査 検討中であります。