白保サンゴ礁



 白保サンゴ礁は沖縄県石垣島の東海岸、広義には宮良湾から通路川までの延長約 12km 幅約 1kmのエリアを指し、狭義にはブーグチからアーサヌサキまでの約7kmと考えられている。
 この海域には北半球で最大最古とされ、「Shiraho」の名を世界的なものにしたアオサンゴ群落をはじめ、巨大な塊り状のハマサンゴ(マイクロアトール)、国内有数の規模を誇るユビエダハマサンゴの群落、そして花びらのように美しいウスコモンサンゴなど数多くのサンゴが生育、ユニークなサンゴ礁生態系を形成している。サンゴ研究者の報告によればそれぞれのサンゴは概ね棲み分け、南側から順にアオサンゴ優先帯、ハマサンゴ優先帯、そして一番北はミドリイシ優先帯に分けられるという。この延長わずか10kmほどの海域に、総延長が2000kmにも及ぶ世界最大のサンゴ礁・グレートバリアリーフ(オーストラリア)に匹敵するサンゴが生育しているともいわれている。
 白保サンゴ礁にはまた、300種以上が確認されている魚類をはじめ、貝類、エビ類、カニ類、イカ類そしてウニやナマコ、さらには海草、海藻などさまざまな生物が生育しており、生物多様性に富んだ豊かな海域となっている。白保の村人はこの海を「魚湧く海」「海の畑」と表現し、先祖代々賢明に利用してきた。
 沖縄の海では1972年の復帰前後からオニヒトデが大発生し、その食害によってほとんどのサンゴ礁が壊滅的な状態になった。オニヒトデは沖縄本島を西海岸から反時計回りに1周したあと、1980年ころまでに八重山の海に移動した。その爆発的な異常発生によって八重山でもほぼ全海域でオニヒトデの食害を受け、大半のサンゴが死滅した。まさに沖縄のサンゴ礁は生きたサンゴの消えた「死せるサンゴ礁」へと変ぼうした。
 しかしほとんど唯一、オニヒトデの食害を受けなかったある一定の拡がりを持った海域があった。それが白保サンゴ礁である。白保ではオニヒトデの大発生はなく沖縄の本来の海が残された。「奇跡の海」といわれる所以である。その理由として、@白保は波浪が強くそのため長大なリーフが発達、それがオニヒトデの進入を防いだAオニヒトデには食べづらい板状のアオサンゴが優先種であったBオニヒトデを撃退するカニや魚が数多くいた、ことなどが考えられている。
 しかしこのようにオニヒトデの食害からは逃れた白保の海も1980年代後半から本格化した土地改良事業による赤土の流入によって年々深刻な状態になってきている。白保サンゴ礁の中央部に流れ込む轟川からは大雨のたびごとに大量の赤土が流入し、いまでは南端部の白保集落前面の船着場まで赤く染まることが頻繁に確認されている。これがサンゴに影響を与えないはずはない。2001年につづき2005年6月にも赤土が原因と見られる巨大な塊状ハマサンゴの大量死が白保海域で確認されている。
 白保サンゴ礁はいま危機的な状態にあり、もうこれ以上のストレスには耐えられない。今こそカラ岳陸上案での空港建設を断念し、農地からの赤土流出をストップしなければこのかけがえのないすばらしい海を未来の子供たちに残していくことはできない。



写真は、素人が使い捨て水中カメラで撮影したものですので、白保の海の素晴らしさを十分に表現できず、申し訳ありません。
撮影日:2005年6月と12月