新石垣空港建設計画とカラ岳陸上案

 1979年7月、沖縄県は増大する航空需要に対応するためとして、石垣島東部・白保地先の海を埋立て2500メートルの滑走路を有する新空港を建設する計画を発表した(白保海上案)。この計画は白保の住民に事前の説明もなく決定されたため集落をあげて激しい反対運動が展開された。しかし島の大多数は賛成で、沖縄県は建設への手続きを強引に推し進めた。
 その後の調査によって、この海域には北半球で最大最古のアオサンゴが群生するなど、学術的にも極めて貴重なサンゴ礁生態系であることが明らかになった。「白保の海を守れ!」の声は国内外に大きく拡がっていった。
 国際自然保護連合(IUCN)は88年2月、中米コスタリカで開いた第17回総会で「白保リーフに関する決議」を採択、日本政府と沖縄県に対し新石垣空港建設計画の見直しを迫った。89年4月、沖縄県は突然に白保海上案を撤回し、建設地を 1.5km北のカラ岳東地区に変更すると発表した(カラ岳東案)。しかしこの変更案も白保サンゴ礁生態系の一部を埋め立てる計画で、到底承知できるものではなかった。IUCNも90年12月、再度見直しを求める決議を採択した。
 このようななか登場した大田知事は92年11月、新石垣空港の建設地を内陸部の宮良地区に変更した(宮良案)。13年間の国内外に広がった反対運動によって新空港の建設地はようやく白保を離れた。しかしここでも優良農地がつぶされるとして地元農民が強く反対、建設へ向けた作業は一向に進まなかった。
 稲嶺現知事は99年8月、建設地をあらためて検討するため地元住民を中心とする選定委員会を設置、カラ岳東、カラ岳陸上、宮良、そして冨崎野の4案の比較検討を諮問した。しかし最初から、環境影響が少なく工事費も安くすむ現空港の拡張案はその対象にも入れなかった。(空港案の位置図)そして事前の環境調査もせず十分な審議もしないまま2000年4月、保護団体の反対の声を無視して、地元の利害や利権調整を最優先にしたカラ岳陸上案が強引に選定された。新石垣空港の建設地はまたまた白保に戻ってきたのである。
 このカラ岳陸上案は、かつて撤回を余儀なくされた白保海上案とカラ岳東案の間の石灰岩台地上に空港を建設しようとするものである。埋立てこそないものの海岸線ぎりぎりまで迫る。大規模な土地改変を伴い工事による赤土の流出や地下水脈の分断などで、白保サンゴ礁生態系への影響が危惧されている。また予定地およびその周辺には絶滅危ぐ種1A類のカンムリワシや同1B類のカグラコウモリなど225種にものぼる希少な野生動植物が確認されており、それらの生息・生育に多大な影響を与えるのは必至である。
 しかし沖縄県は2002年12月に環境影響評価方法書の縦覧に踏み切り、2003年6月からは地権者の同意取り付けに入った。そして2004年3月に環境影響評価準備書の公告・縦覧、2005年2月には環境影響評価書の国交(環境)大臣への提出を強行した。
 この評価書に対して環境省は同年4月、「制度があれば差し戻したいくらいだ」と述べた。そして白保サンゴ礁や絶滅危ぐ種コウモリなどの保全に「万全を期すること」と、追加調査などを含む24項目にわたる厳しい大臣意見を出した。しかし沖縄県はこの9月、事業日程に合わせたお座なりな調査しかしないまま、ほとんど机上での修正や追加措置だけで評価書の補正を終了。直後に空港設置許可申請を国交大臣に提出し、年内にも事業着手を狙っている。
 これに対して私たちは、新石垣空港カラ岳陸上案の見直しを求めてトラスト運動や署名運動を展開。陸海一体の世界的に貴重な白保の総合的生態系を保全し、世界遺産に登録していくために、厳しい状況ながら粘り強く活動を続けている。ご支援、ご協力をお願いします。



新石垣空港(カラ岳陸上案)全体平面図(pdfファイル)543KB